藍弁慶あいべんけい)” の例文
と、自身番へ戻って、さびついた捕物道具が並べてある狭い部屋へ、預けておいた藍弁慶あいべんけいの男をひき据えた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
紋着もんつき、羽織、儀式一通りは旅店のトランクに心得たろうが、先生、こまか藍弁慶あいべんけいの着ものに、こんの無地博多はかたを腰さがり、まさか三尺ではないが、縞唐桟しまとうざんの羽織を着て
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
藍弁慶あいべんけいの長着に焦茶絞こげちゃしぼりの三尺という服装こしらえもその人らしくいなせだった。
ほんのばたきをする瞬間だった。藍弁慶あいべんけいの町人と編笠のふたりが、辻の中ほどで何かによろめいた。——と思うまに、ぱッと、二人は左右に駈け別れているのだった。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
藍弁慶あいべんけい素袷すあわせ算盤縞そろばんじまの三尺帯をきりっと横締めにした小粋こいきな男である。それが絶えず鋭い眼配りを撒いているので、ちょうど編笠の侍をかばっているような風に見える。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)