菱川師宣ひしかわもろのぶ)” の例文
浮世絵の役者似顔絵はこれら必然の要求に応じたるものにして、その濫觴は浮世絵板画の祖ともいふべき菱川師宣ひしかわもろのぶなるべし。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
勿論、改良美濃紙の復刻本であったが、原図の菱川師宣ひしかわもろのぶのあの暢艶ちょうえんで素雅なおもむきはちらりちらり味えた。しかし、自然の実感というものは全くなかった。
東海道五十三次 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
島田まげ白丈長しろたけながをピンとねた、小凜々こりりしい。お約束でね、御寮人には附きものの小女こおんなですよ。あれで御寮人の髷が、元禄だった日にゃ、菱川師宣ひしかわもろのぶえがく、というんですね。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
近世浮世絵の大宗匠菱川師宣ひしかわもろのぶは、諸君のその三十五方里の間から生れました。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
雲母摺きららずりの本間の襖には、秋草をあしらった、虫取りの美人の図が描いてあり、四枚つづきの、線のたっぷりした、なよやかな筆つきであるが、みると、菱川師宣ひしかわもろのぶという、町絵師の名が書いてあった。
山彦乙女 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
遠くは菱川師宣ひしかわもろのぶの『狂歌旅枕たびまくら』、近くは宝暦ほうれき初年西村重長にしむらしげながの『江戸土産えどみやげ』及び明和めいわに入りて鈴木春信が『続江戸土産』の梓行しこうあるに過ぎざりしが
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
清長は浮世絵発達の歴史上その創始者なる菱川師宣ひしかわもろのぶまた錦絵の発明者なる中興の祖鈴木春信すずきはるのぶと並びてこれらの三大時期を区別せしむべき最も重要なる地位を占む。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)