至当しとう)” の例文
旧字:至當
しばらく立場をえて、自己が自然になり済ました気分で観察したら、ただ至当しとうの成行で、そこに喜びそこに悲しむ理窟りくつごうも存在していないだろう。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
フフン……お申しこしの儀は、真剣勝負とは申せ、柳生一刀流と不知火十方流のいわば他流仕合いにつき、相互の腕以上の判定者を立ちあわしむるを至当しとうとす。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
しかし、長安のほうに渡すのが至当しとうか、五菩薩ぼさつ仮名けみょうをつかってでてきた者にわたしたほうがいいものか、双方そうほうのあいだにはさまって、まったくとうわくの顔色だ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、行為の直後に行なわれたと見るべきが至当しとうであることに、専門家の意見は一致していた。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
、云わなかった。だから、今度の、予言も、嘘でないと、考えるのが、至当しとう
悪霊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
実際それは至当しとうな評である、浦和中学は師範学校と戦っていつも優勝し、その実力は埼玉県を圧倒しているのだ、昨日きのう今日きょうようやく野球を始めた黙々塾もくもくじゅくなどはとても敵しべきはずがない。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
「ぼくらは今後この洞穴のなかで生命いのちをつながなければならん、それはひっきょう山田先生のおかげである、ぼくらは礼として、まず山田先生のはかに、おじぎをするのが至当しとうじゃなかろうか」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
私の方で帯びるのが至当しとうになるくらいな語気で私は賛成したのです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「保険会社の方が至当しとうですわ」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)