自暴自棄じぼうじき)” の例文
今日、浜御殿の広場で、父に打擲ちょうちゃくされた上、勘当とまで、極端な叱りをうけた又十郎は、お駒の家で、自暴自棄じぼうじきな酒をあおっていた。
柳生月影抄 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けだし廃藩以来、士民がてきとしてするところを失い、或はこれがためその品行をやぶっ自暴自棄じぼうじき境界きょうがいにもおちいるべきところへ、いやしくも肉体以上の心を養い
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
警部は自暴自棄じぼうじきで、苦闘している部下のところへ飛びこんでゆきたいのを、じっとこらえていました。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
こうした境遇に置かれた時、私が自暴自棄じぼうじき的な気持ちになったのはとがめらるべきであろうか。無論私は、咎めらるべきである。私は私自身の生命を冒涜ぼうとくしているのである。
それは神経衰弱的な恐迫観念がときどき槍尖やりさきのように自分を襲って来たが、しかし、最後の落ち着きどころは空虚と見究みきわめがついていたので、まだ自暴自棄じぼうじきの痛快味があった。
宝永噴火 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
すくなくとも、彼はそう感じて、その自暴自棄じぼうじき憤怒ふんぬ——かなり不合理な——が彼を駆って盲目的に、そして猪進ちょしん的に執念しゅうねんの刃をふるわせ、この酷薄な報復手段をらしめたに相違あるまい。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
悪いひつじを善良にするのはひつじかいの義務ではありますまいか、いまここで退校にされればかれは不良少年としてふたたび正しき学校へ行くことができなくなり、ますます自暴自棄じぼうじきになります
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
いたずらに敵を憎んで、やれ、扶持ふちを離れた人間の自暴自棄じぼうじきだとか、虚名を博すための行為だとか、裏を掻いたような観方をする奴には、武士道の極美が
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は自暴自棄じぼうじきになって、不逞ふていにも和歌宮先生の許へ暴れ込んだ。
大脳手術 (新字新仮名) / 海野十三(著)
自暴自棄じぼうじきになっているのだ」
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)