肉汁ソップ)” の例文
幸にして医師の診断によればわが病はかかる恐しきものにてはなかりしかど、昼夜ちゅうやたゆひまなく蒟蒻こんにゃくにて腹をあたためよ。肉汁ソップとおも湯のほかは何物もくらふべからず。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
昨夕は川崎造船所の須田君すだくんからいっしょに晩食ばんめしでも食おうと云う案内があったが、例のごとく腹が痛むので、残念ながら辞退して、寝室で肉汁ソップを飲んで寝てしまった。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
骨までしゃぶるわ。餌食の無慙むざんさ、いや、またその骨の肉汁ソップうまさはよ。(身震いする。)
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「あの女」の病勢もこっちの看護婦の口からよくれた。——牛乳でも肉汁ソップでも、どんな軽い液体でも狂った胃がけっして受けつけない。肝心かんじんの薬さえいやがって飲まない。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
骨までしやぶるわ。餌食の無慙むざんさ、いや、又の骨の肉汁ソップうまさはよ。(身震ひする。)
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
自分が始めて彼のぜんを見たときその上には、生豆腐なまどうふ海苔のり鰹節かつぶし肉汁ソップっていた。彼はこれより以上はしを着ける事を許されなかったのである。自分はこれでは前途遼遠ぜんとりょうえんだと思った。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
与次郎が、フランスの画工アーチストは、みんなああいう襟飾りを着けるものだと教えてくれた。三四郎は肉汁ソップを吸いながら、まるで兵児帯へこおびの結び目のようだと考えた。そのうち談話がだんだん始まった。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)