耳掻みみか)” の例文
茶の間には長火鉢の上の柱に、ある毛糸屋の広告を兼ねた、大きな日暦ひごよみが懸っている。——そこに髪を切った浅川の叔母が、しきりと耳掻みみかきを使いながら、忘れられたように坐っていた。
お律と子等と (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
袋の中から耳掻みみかきに一ぱいほどの物を出して、水を入れて火の上にかけると、たちまちのうちに一鍋の真白な米の飯が出来た。それを主人夫婦にも食べさせて、お前たちは誠に立派な人だ。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
片方に白いふさふさの羽毛を附したる竹製の耳掻みみかきを見つけて、耳穴を掃除し、二十種にあまるジャズ・ソングの歌詞をしるせる豆手帳のペエジをめくり、小声で歌い、歌いおわって、引き出しのすみ
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)