耐忍がまん)” の例文
こらえかねてこちらから手紙を出して見たが、それに対する返辞もない。とうとう耐忍がまんしきれなくって、その次の次の日に清月まで出かけて行った。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
吉里は小万に酌をさせて、一息に呑むことは飲んだが、酒が口一杯になッたのを、耐忍がまんしてやッと飲み込んだ。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
これだけの拔き書きの中からすらも、女性を無知のものとして眼をつぶらせて、何事も耐忍がまんせよといふのでなく、よく生きよと教へられてゐるのがたふとい。
と隣室での身じろぎに、折角全治に近い主人あるじに、風邪でもひかしては大變だと思つて、返事もせず、寢たふりをして、凝と耐忍がまんをしてゐると、もう潮時だつたと見えて、好いあんばいに落付いて來た。
煎薬 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)