たと)” の例文
新字:
姫に手をかれたる我は、とらへられし小鳥に殊ならず。たとひ羽ばたきすとも、歌はでは叶はず。姫の歌はんといふは、わが知れる雙吟ヅエツトオなり。
彼曰ふ、あゝ子よ、この群の中たとひ束の間なりとも止まる者あればその者そののち身を横たゆる百年もゝとせに及び火これを撃つとも扇ぐによしなし 三七—三九
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
伯父さんがそう云ったてめえ一人でたとえ敵討をする心でも大胆だ、とても西国巡礼は出来ぬ、道中は、怖いもので、昔これ/\のことが有ったと云って意見をなすった
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
忠之はたとひ身の破滅は兔れぬにしても、なるべく本邸で果てたいと云ふので、内藏允が思案して、忠之の駕籠かごを小人數で取り卷き、素槍すやり一本持たせて、夜こくに神奈川を立たせた。
栗山大膳 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
たとひ有るまじきことある世とならんも、羅馬は猶その古き諸神の像と共に、その無窮なる美術と共に、世界の民にあがめられん。
しかし文政頃の手紙の文は、たとひ興味のある事が巧に書いてあつても、今の人には讀み易くは無い。忍んでこれを讀むとしたところで、許多あまたの敬語や慣用語が邪魔になつてその煩はしきに堪へない。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
かくてこの身はやうなきしろものとなりぬ。たと羅馬ロオマわたりに持ち往きてらんとし給ふとも、盾銀たてぎん一つ出すものだにあらじ。かどある生活なりはひわざをも知らず。