絆纏ばんてん)” の例文
社殿の縁には、ねんねこ絆纏ばんてんの中へ赤ん坊をおぶって、手拭てぬぐいの鉢巻をした小娘が腰を掛けて、寒そうに体をすくめている。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
土間に、顔も鼻の穴も手も真っ黒によごれた仕切り絆纏ばんてんの五十格好の親爺が立っていた。私が入って行くと、その親爺は黒い顔から茶色の眼を光らせて、無言で私を睨めた。
泡盛物語 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
母は負ぶいひもき、腕を伸ばしてにこにこかすりの負ぶい絆纏ばんてんえりはだけて
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
何が飛んで来るか知れたものではなし、外見みえよりは身が大切だいじ、いくら襤褸ぼろでも仕方ない刺子絆纏ばんてんも上にておいでなされ、と戸棚がたがた明けにかかるを、十兵衛不興げの眼でじっと見ながら
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
黒繻子くろじゅすえりの掛かったねんねこ絆纏ばんてんを着て、頭を櫛巻くしまきにした安の姿を、瀬戸は無遠慮に眺めて、「こんなお上さんの世話を焼いてくれる内があるなら、僕なんぞも借りたいものだ」
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)