純白まっしろ)” の例文
朝霧淡くひとつひとつに露もちて、薄紫にしべ青く、純白まっしろの、蘂赤く、あわれに咲重なる木槿の花をば、継母はかゆに交ぜて食するなり。こは長寿ながいきする薬ぞとよ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
純白まっしろの裏羽を日にかがやかし鋭く羽風を切って飛ぶは魚鷹みさごなり。その昔に小さき島なりし今は丘となりて、そのふもとには林をめぐらし、山鳩やまばと栖処ねぐらにふさわしきがあり。
小春 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
むらさき絹紐リボンは取って捨てた。有るたけは、有るに任せて枕に乱した。今日きょうまでの浮世と思う母は、くしの歯も入れてやらぬと見える。乱るる髪は、純白まっしろ敷布シートにこぼれて、小夜着こよぎえり天鵞絨びろうどつらなる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
カラアの純白まっしろな、髪をきちんと分けた紳士が、職人体の半纏着を引捉ひっとらえて、出せ、出せ、とわめいているからには、その間の消息一目して瞭然りょうぜんたりで、車掌もちっとも猶予ためらわず
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その泥がにじんでいる純白まっしろなのを見て、傾いて
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)