粗末ぞんざい)” の例文
「ああ、もしもし今ね、来客中で少し差支えるそうです。午後の一時頃来るなら来ていただきたいという事です」と前よりは言葉がよほど粗末ぞんざいになっていた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すると昨夕から今朝にかけて美しいお宮が普通あたりまえ淫売おんなになって了った。口の利きようからして次第に粗末ぞんざいな口を利いた。自分の思っていたお宮が今更に懐かしい——。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
坊主頭の船頭は、粗末ぞんざいな言葉で、たこを捕るんだと答えた。この奇抜な返事には千代子も百代子も驚ろくよりもおかしかったと見えて、たちまち声を出して笑った。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その座蒲団は更紗さらさの模様を染めた真丸の形をしたものなので、敬太郎は不思議そうにその上へすわった。とこには刷毛はけでがしがしと粗末ぞんざいに書いたような山水さんすいじくがかかっていた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)