笑靨ゑくぼ)” の例文
ドアしづかに押し開けられると、一度見たことのある少年が、名刺受の銀の盆を、手にしながら、笑靨ゑくぼのある可愛い顔を現した。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
つぎ綺麗きれい首筋くびすじ、形の好いはな、ふツくりしたほゝ丸味まるみのあるあご、それから生際はえぎはの好いのと頭髪かみのけつやのあるのと何うかすると口元くちもと笑靨ゑくぼが出來るのに目が付いた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
細君は小柄で色の白い、そばかすの浮いた顔をしてゐたが、笑ふと愛嬌あいけうのいゝ笑靨ゑくぼが浮いた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
お茂は恥のない顏をあげて、輕蔑けいべつしきつたやうに笑ひました。白い齒が秋の陽に光つて、頬に渦卷く笑靨ゑくぼも、皮膚をく血の色も、少し赤味を帶びた毛も、恐しく魅力的です。
何よりも先づ、その石竹色に湿うるんでゐる頬に、微笑の先駆として浮かんで来る、笑靨ゑくぼが現はれた。それに続いて、慎ましい脣、高くはないけれども穏やかな品のいゝ鼻。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
身體中のあらゆる關節に笑靨ゑくぼの寄るといつた、大變な大年増でした。
と投出すやうに謂つて、莞爾にツこりする。片頬に笑靨ゑくぼが出來る。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)