つま)” の例文
歓迎されたのは嬉しかったが、もうもうと煙草の煙りのこもったへやへ入ると、しきりに咳が出て呼吸いきつまりそうだった。
碧眼 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
私は娘が立った瞬間から、頭にかっと血が上ったように、呼吸さえつまるような昂奮を感じた。そして、すぐ表のそばへ行って見たいような気がした。
性に眼覚める頃 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
まるでうまやの様に小さな狭くるしい部屋がずらりと続いて、その入口には一々値段が書き出してあるのだ。息のつまる様な闇の中には、女の裸体が白く見えて居た。……
大衆文芸作法 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
父親に告口をしたのが憎らしいと云って、口をねられたり、妹をいじめたといっては、二三尺も積っている脊戸せどの雪のなかへ小突出こづきだされて、息のつまるほどぎゅうぎゅう圧しつけられた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
そして半ば息のつまりかけたやうな聲が叫んだ——
私はそれを見ていて息がつまるような気がした。心持からか、彼女はすこし蒼ざめたような頬をして、その合せた左の手が不自然な、柔らかい恰好をして握られると、いきなり袂の中へ飛び込んだ。
性に眼覚める頃 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
全く呼吸もつまるやうなものに打たれた。
帆の世界 (旧字旧仮名) / 室生犀星(著)