硝子玉ガラスだま)” の例文
骸骨コツを渋紙でり固めてワニスで塗り上げたような黒光りする凸額おでこの奥に、硝子玉ガラスだまじみたギラギラする眼球めだま二個ふたつコビリ付いている。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
立ちるように吉良兵曹長はさけんだ。獣のさけぶような声であった。硝子玉ガラスだまのように気味悪く光る瞳を、真正面に私にえた。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
していたのに俄かにかたく死んだようになってその眼もすっかり黒い硝子玉ガラスだまか何かになってしまいいつまでたっても四十雀ばかり見ているのです。
黄いろのトマト (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「そら今度こんだこそ雪子の勝だ」と云って愉快そうに綺麗きれいな歯をあらわした。子供のひざそばには白だの赤だのあいだのの硝子玉ガラスだまがたくさんあった。主人は
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかし今度の訪問で、ひどく驚いたことは、発掘品の中に、硝子玉ガラスだまが七、八個あったことである。
あすへの話題 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
エミリイの硝子玉ガラスだまの眼や、不服もなさそうな顔付を見ると、セエラは急にむかむかして来ました。
俄成金にわかなりきんは時に方図もない札びらを切り、千金のダイヤも硝子玉ガラスだまほどにも光を放たないのであった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
城太郎の眼は、硝子玉ガラスだまのように曇って、武蔵の顔をぼうと見上げている。今朝、鬼女の笑い仮面めんを両手にあげて、嬉々と逃げまわっていた子供の眼と一つものとは思えないほど静かなまぶたである。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)