相携あいたずさ)” の例文
魯智深ろちしんはいった。——九紋龍くもんりゅう史進ししんもまたこの奇遇を尽きない縁ときょうじてやまない。そして相携あいたずさえつつ、もとの瓦罐寺がかんじのほうへ歩きだした。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのくせ郁治と美穂子とはよく相携あいたずさえて散歩した。男は高師の制帽をかぶり、女は新式の庇髪ひさしがみって、はでな幅の広いリボンをかけた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
わたくしが亡友井上唖々子ああし相携あいたずさえて散策の途次、始めてこの陋屋の門を叩いたのは大正八年の秋も暮れ行く頃であった。
枇杷の花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
しかも人間は相携あいたずさえてこの悲劇的な道を、欣求精進ごんぐしょうじんしなければならない。人間は次善に満足しながら、しかも常に最高善の追求を放棄ほうきすることを得ないのである。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
北原と、村田とが相携あいたずさえて、それからいくらもたたない時間の後、お雪ちゃんの部屋をたずねて
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
大東京のマン中で開業する……そうして相携あいたずさえて晴れの故郷入りをする……と言う事を終生の目的としておったので、故なくして他人の玩弄がんろうとなる事を極度に恐れた彼女は
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
活発なる若い学生と勤勉なる若い巡査とは、相携あいたずさえて角川家を出発した。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ふたりとも、退がって、少し休息するがいい——と許され、三成と、山城とは、相携あいたずさえて、庭へ出た。新秋八月の大きな月が空にあった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
右預金のほとんど全額を引出し、愴惶そうこうたる態度で立去りたる旨判明、なお市外十軒屋に居住しおりし同人妻ハル(四十七)も家財を遺棄し、旅装を整え、相携あいたずさえて行方をくらましたる形跡ある旨
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
この考えは、その夜、垂井の駅で、親しく秀勝に会って、楽しく語り、また翌日、秀勝とともに、相携あいたずさえて、不破を越え、長浜の城下を通るまでも変らなかった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのすべてが皆、実戦への参加をわが子にせがまれ、或いは、父が望んで、相携あいたずさえてきたものだった。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)