略〻ほゞ)” の例文
彼の手記に依って想像すると、その部屋は相当の廣間ひろまであったらしく、彼が首を出していた穴は略〻ほゞ座敷の中央にあったように思われる。
人に泣き顔を見せるのを嫌ひ、又よし泣くのを見せても声などを決して立てた事のない妻が、床の中でどうしてゐるかは彼には略〻ほゞ想像が出来た。
An Incident (新字旧仮名) / 有島武郎(著)
二階を年内のすき焼に、三階を洋食の食堂にてようといふことまで略〻ほゞきまつた。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
宍戸 いや、御事情は略〻ほゞお察しします。で、失礼ですが、お連れ合ひは……。
百三十二番地の貸家 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
薬師寺の時の寄せ手は二萬と云う数であったが、今度も武州公の麾下と、檜垣衆と、横輪勢と、三つの兵力が合していたから、略〻ほゞ同じ数に達していた。
しかし桔梗の方をそゝのかして則重を口説き落し、遂に檜垣の宗徒等と事を構えるようにさせた黒幕が、武州公であったろうことは略〻ほゞ想像がつくのである。
自分は貴下がかの盲目物語の資料と着想とを那辺なへんより得られたかを知らないけれども、偶〻たま/\自分の手元にも、あれと時代を同じゅうするのみか略〻ほゞ背景をも同じゅうしながら
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)