瑇瑁たいまい)” の例文
誰が開けたか、路地へ抜ける木戸はバタバタになって、そこには夜目にもほの白く、贋物まがいものながら、瑇瑁たいまいかんざしが一本落ちております。
や、何とも云へぬ名香みやうがうのかをり、身も心も消ゆるやうぢや。四方には華の瓔珞やうらく、金銀、錦の幡天蓋はたてんがい瑇瑁たいまいの障子、水晶のみす
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
さっき浅草で拾ったのは、これも桔梗様の持ち物? 瑇瑁たいまいの櫛へ巻き付けた血書! そうしてここには銀簪! とするとこれからも要所々々へ、何か品物を
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
弦之丞は少し退さがって、その診察の手際てぎわを眺めていたが、女の後ろ形が、極めて痩せていることから眼をみはって、帯つきや肩の線や、瑇瑁たいまいこうがいなめらかさや
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いいんだいいんだおんめちゃん」と芳造は手を振った、「青海亀ってのはねおばさん、赤海亀っていう駄物と違って、瑇瑁たいまいにいちばん近い甲羅を持ってるんだ」
枡落し (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
一、瑇瑁たいまい 背甲五百六十七枚、縁板千七十二枚、尤モ島ニテハ焼継、寄継不叶、背甲のまま
ボニン島物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
そのあなたを私が想うようになりました、ある晩、暗い所で、あなたをお待ちしていて、綉羅うすぎぬ銭篋ぜにばこを差しあげますと、あなたは私に、瑇瑁たいまい脂盒べにざらをくださいました、二人の間は
緑衣人伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
わずか五両か十両の瑇瑁たいまいのために、女性の優しさのすべてを捨てて、死骸に付く狼のように、殺された女の死骸を慕うて駆けて行くのを見ると、市九郎は、もうこの罪悪の棲家すみか
恩讐の彼方に (新字新仮名) / 菊池寛(著)
瑇瑁たいまいじゃないか」
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
誰が開けたか、路地へ抜ける木戸はバタバタになって、そこには夜目にもほの白く、贋物まがいものながら、瑇瑁たいまいかんざしが一本落ちております。
ニュウ・ギニアと南太平洋を股にかけ、銃器密売、コプラ、甘蔗、海鼠、瑇瑁たいまい、極楽鳥。
三界万霊塔 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
山海の珍味、錦繍きんしゅうの衣裳、望むがままに買うことも出来、黄金こがねかんざし瑇瑁たいまいくし、小判さえ積めば自分の物となる。そうです。実に小判さえ出せば万事万端おの自由まま——これが江戸の習俗ならわしです。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
拾ってみると、なめらかな瑇瑁たいまいこうがい。お米のものと判定するよりほかはない。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
取った時に、ちらと睨んでおいたのさ。瑇瑁たいまいの揃いに相違なかったよ
恩讐の彼方に (新字新仮名) / 菊池寛(著)
一、魚は黒鯛、鯔、鮫、三尺斗の海老、三尺程も有ル章魚、亀は畳一畳程も有之青海亀、瑇瑁たいまい、獲立も不成程、磯海苔の間、八尋より十尋程の海中に珊瑚沢山に有之、二月三月の内は鯨夥しく通行致候
ボニン島物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
一、瑇瑁たいまい 総体ニテ一万二千百両
ボニン島物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)