犬吠いぬぼう)” の例文
尻屋しりやの燈台、金華山きんかざんの燈台、釜石かまいし沖、犬吠いぬぼう沖、勝浦かつうら沖、観音崎かんのんざき浦賀うらが、と通って来た。そして今本牧ほんもく沖を静かに左舷さげんにながめて進んだ。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
丁度明治天皇様崩御の後、私は犬吠いぬぼうへ写生に出かけた。その時別の宿に彼女が妹さんと一人の親友と一緒に来てゐて又会つた。
智恵子抄 (新字旧仮名) / 高村光太郎(著)
遠く東の海には犬吠いぬぼうが横わり、夢見る様な水平線の彼方を、シアトル行きの外国船らしい白い船の姿が、黒い煙を長々と曳いて動くともなく動いていた。
花束の虫 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
この古ぼけた洋館を宿にしたいなんていうのは、まことに微妙なことでして……こちらのご長女さまが、犬吠いぬぼうのサナトリウムにいるご長男の附添いで行っていられて
我が家の楽園 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「先生だそうです。」帳場で多分私のことだろう、女将おかみに告げている番頭の声がきこえた。私は宿屋のどてらに着換えて散歩に出た。犬吠いぬぼう岬の灯台を仰いでから、映画館に入った。
遁走 (新字新仮名) / 小山清(著)
しかし、これを裏へ出れば屏風びょうぶうらとなり、遠からずして犬吠いぬぼうさきがあり、銚子の港がある。銚子の港の前面には、利根の長江がさえぎっているから、まさかそれをよこぎるほどのことはあるまい。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
犬吠いぬぼうの涼しき月や君は
七百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
屏風びょうぶヶ浦より犬吠いぬぼう
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
その他は必ず夜着くように犬吠いぬぼう沖か、勝浦沖かで彼女は散歩を強制せられるのであった。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)