無償ただ)” の例文
だから※は他人ひとの金を右から左へ持って行っただけで、三分にして年三割六分、全く無償ただで二割六分(二割六分!)も儲けているのだ。
不在地主 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
くそ喰らえだ! おれは、無償ただでもやろうかと思ってたのだが、もう断じて、やらないぞ! 帝国を三つよこしたって、呉れてやるもんか。
「そうか、じゃ二百両もする安南絵の壺よりも、その一平という奴の首を探して帰った方が、侍らしいし、第一、無償ただだから手に入れ易いというものだ」
醤油仏 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
金と引換ならまだしも、無償ただで、おれが金をかけて買つたものを取られてしまふのだ。彼は、いきふさがりかけたと感じた。そして、すこし、あわてたと思つた。
四人 (新字旧仮名) / 芥川多加志(著)
そんな折の関係と土地ッ子なので、あの広大な土地を無償ただでくれようというのだったろう。無償とはいわないで、長谷川この土地はお前の名にしておけといわれたのだったそうだ。
旧聞日本橋:17 牢屋の原 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
この家はなかなか大きなもので、ずっと前に勤番の支配であった旗本がこしらえて、その後は長く空家同様になっていたのを神尾主膳が、何かの縁で無償ただのように自分のものにしたのです。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
でも、わたしたちの日給いくらだと思っているの。五十銭から七八十銭。月いくらになるか直してごらんよ。——淫乱すきなら無償ただでやらせらアねえ!
工場細胞 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
「馬鹿な、ねえ君、どうしてそんなユダヤ人根性を出すんだろう! そんなもの、無償ただでくれたっていいんだのに。」
道路や灌漑溝の修繕工事をすると云って、日雇賃を地主から出さして置いて、小作人を無償ただで働かし、それをマンマと自分のものにしてしまった。
不在地主 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
一体こりゃどうしたんです?……さも重大なことみたいに仰っしゃってさ! 他処ほかでだったら無償ただでもくれますよ。