濛煙もうえん)” の例文
ところが、その猛射は、滅前の一燦いっさんだった。程なく、はたと止むと、城楼じょうろうの一端から、ボウと赤い焔がして、月の夜空へ濛煙もうえんを吐き出した。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すぐ妙覚寺へ行ったが、ここの一隊もすでに二条へたてこもり、城内は濛煙もうえんにつつまれている様子。はや落去の後だった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二どめの爆音ばくおんとともに、ふたつにけた望楼台ぼうろうだいは、そのとき、まっ黒な濛煙もうえんと、阿鼻叫喚あびきょうかんをつつんで、大紅蓮だいぐれんきだした殿堂のうえへぶっ倒れた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、秀吉は東浅井の半ばにもわたる辺土のいちめんな濛煙もうえんを見て、ふとくちをかむかの如くつぶやいて
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)