漣波さざなみ)” の例文
それにただ一面に穂芒ほすすきが茂り連なって見渡す限り銀色の漣波さざなみをたたえていた。実にのびのびと大きな景色である。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
その雪峰の前を流れて居る水は潺々せんせんとして静かに流れ去る。その漣波さざなみに明月が影を宿して居る。その月光がいちいち砕けて実にうるわしき姿を現わして居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
グレー街の三階の部屋へ戻った時には、まだガラス窓に黄色い薄日が漣波さざなみのように慄えていた。広い家の中はカタリともせず真夜中のようにしずかであった。
日蔭の街 (新字新仮名) / 松本泰(著)
われ等の千言万語も、遂に彼等の心の表面に、一片の漣波さざなみさえ立たせ得る望みはない……。
風の吹き荒れたままに漣波さざなみ状をして、湖水のおもてに尖波が立ったような状能になり、そのままこおっているのがある、また円い輪が幾つもつらなって、同心円が出来ているのもある。
高山の雪 (新字新仮名) / 小島烏水(著)