漁師町りょうしまち)” の例文
待っていると云ったが、清吉は、秀八の後からけて行った。しおくさい漁師町りょうしまち露地ろじへ、彼女は、小走りに入って行った。
春の雁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
君は眉根まゆねの所に電光のように起こる痙攣けいれんを小うるさく思いながら、むずかしい顔をしてさっさとにぎやかな往来を突きぬけて漁師町りょうしまちのほうへ急ぐ。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
島尻しまじり糸満いとまんという漁師町りょうしまちがあります。暮し方が違うので、風俗も違い持物も違います。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
公郷村くごうむらとは、船の着いた漁師町りょうしまちから物の半道と隔たっていなかった。半蔵らは横須賀まで行って、山上のうわさを耳にした。公郷村に古い屋敷と言えば、土地の漁師にまでよく知られていた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あたかも漁師町りょうしまち海苔のりを乾すような工合に、長方形の紙が行儀よく板に並べて立てかけてあるのだが、その真っ白な色紙しきしを散らしたようなのが、街道の両側や、丘の段々の上などに、高く低く
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)