滅入込めいりこ)” の例文
彼は伯母が後でかう呟いて身も世もあらず滅入込めいりこんでゐる様を想像して、心から気の毒に思ひ乍らも、をかしくなつて独り笑つてゐた。
まったくだね、股引ももひきの裾をぐい、と端折はしょった処は豪勢だが、下腹がこけて、どんつくのおしに打たれて、猫背にへたへたと滅入込めいりこんで、へそからおとがいが生えたようです。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まるで、自分はあなの底へ滅入込めいりこんで行く、火はこれに反して坑からだんだんり上がって来る、——ざっと、そんな気分がした。時にぱっと部屋中が明るくなった。見ると電気灯がいた。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
顔色青き白雲天窓しらくもあたま膨脹ふくだみて、えりは肩に滅入込めいりこみ、手足は芋殻いもがらのごとき七八歳ななつやつの餓鬼を連れたり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一緊ひとしめ胸をめたほど、顔の上へ暗さが乗懸のしかかったので心着くと、やがて、すうすうしお退塩梅あんばいに、あかりが小さく遠くなり、はるかに見え、何だか自分が寝た診察台の、枕の下へ滅入込めいりこんで
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)