湿気しっき)” の例文
旧字:濕氣
ルウベンスまたタアナアの描ける暴風の図は人をして恐怖の情を催さしむといへども暴風のもたらし来る湿気しっきの感を起さしむる事まれなり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
四月の末だというのに、湿気しっきを含んだ夜風が、さらさらと辻惑つじまどいに吹迷って、の花を乱すばかり、さっと、その看板のおもてを渡った。
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それもみやこなどでは見た事もあるまい。白地鳥と云う物は、背の青い、腹の白い、形はこうにそっくりの鳥じゃ。この島の土人はあの肉を食うと、湿気しっきを払うとかとなえている。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
実にこの高原の続きこそは、東の海の側からと、西の方からとの風や湿気しっきのお定まりのぶっつかり場所でしたから、雲や雨や雷や霧は、いつでももうすぐ起って来るのでした。
種山ヶ原 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
じつにこの高原のつづきこそは、東の海のがわからと、西の方からとの風や湿気しっきのおさだまりのぶっつかり場所ばしょでしたから、雲や雨やかみなりや霧は、いつでももうすぐおこってくるのでした。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)