湿地しけち)” の例文
旧字:濕地
お千は、それよりも美しく、雪はなけれど、ちらちらと散る花の、小庭の湿地しけちの、石炭殻につもる可哀あわれさ、痛々しさ。
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
震災に焼けはしなかった土地と思うが、往来ゆききもあわただしく、落着きのない店屋が並んで、湿地しけちか、大溝おおどぶを埋めたかと見え、ぼくぼくと板を踏んで渡る処が多い。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
建てて数十年を経たる古家なれば、掃除は手綺麗てぎれいに行届きおれども、そこらすすぼりて余りあかるからず、すべて少しく陰気にして、加賀金沢の市中にてもこのわたりは浅野川の河畔一帯の湿地しけちなり。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)