“湿地”のいろいろな読み方と例文
旧字:濕地
読み方割合
しっち52.6%
しけち15.8%
しめぢ10.5%
しつち5.3%
しめじ5.3%
しめち5.3%
ヤチ5.3%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
裏の林の中によしえた湿地しっちがあって、もといけであった水の名残りが黒くびて光っている。六月の末には、剖葦よしきりがどこからともなくそこへ来て鳴いた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
お千は、それよりも美しく、雪はなけれど、ちらちらと散る花の、小庭の湿地しけちの、石炭殻につもる可哀あわれさ、痛々しさ。
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あるは、また、かげの湿地しめぢに精液のにほひを放つ草もあり。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あゝ、薄命はくめいなあの恋人達はこんな気味きみのわるい湿地しつちまちに住んでゐたのか。見れば物語の挿絵さしゑに似た竹垣たけがきの家もある。垣根かきねの竹はれきつて根元ねもとは虫にはれて押せばたふれさうに思はれる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
啓蟄あなをでて間のない小蛇が、井戸端の湿地しめじに、灰白い紐のように延びていたが、草履を飛ばせ、跣足はだしとなり、白いあしうらをあらわしている死骸の染八の、その蹠の方へ這い寄って行った。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
谿くまの湿地しめちに生ふる鼬羊歯いたちしだかすかなるくもりにあり
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
最早もう人気ひとけは全く絶えて、近くなる時斗満の川音を聞くばかり。たかなぞ落ちて居る。みちまれに渓流を横ぎり、多く雑木林ぞうきばやし穿うがち、時にじめ/\した湿地ヤチを渉る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)