“渝(か)” の例文
如(も)し誓いを渝(か)えたら親が死んで土に埋り腐って松三本生えるという意と聞いたごとく、サンタル人はもと虎を祖先と信じたのかと思う。
もちろんその寂しい感じには、父や兄に対する私の渝(か)わることのできない純真な敬愛の情をも含めないわけにはいかなかった。それは単純な利害の問題ではなかった。
蒼白い月 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
我に便よき説をも案じ出して、かかる折なほ独善の道を守らば弥々(いよいよ)道に背(そむ)かんなど自らも思ひ人にもいひて節を折るべきに、さはなくてあくまでも道を守りてその節を渝(か)へず
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
池田錦橋と親しく交り、その歿するに及んで墓表を撰み、廃嫡の子京水を憐んで交を渝(か)へなかつたのは即此人である。わたくしは後に安積艮斎(あさかごんさい)の樗園の平生を記したのを見た。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
国事多端のおりからにも古例を渝(か)えたまわず、民情洞察の意をもって鷹野の御成をおこなわせられること、誠にもって慶祝のいたり、物情騒然(ぶつじょうそうぜん)たる時勢、御道中警備の手はずには
顎十郎捕物帳:09 丹頂の鶴 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)