海神わたつみ)” の例文
これは紛れもなく海神わたつみの宮の口女くちめであり、また猿のきもの昔話の竜宮りゅうぐう海月くらげであって、こういう者が出てこないと、やはり話にはなりにくかったのである。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
海神わたつみの宮の話があると、それはどこかの地方的勢力、または海中の島国のことであると考える。八股蛇やまたのおろちの物語があるとそれは賊軍を征服せられたことだという。
神代史の研究法 (新字新仮名) / 津田左右吉(著)
「みどり児の乳乞ちこうがごとく、あまつ水仰ぎてぞ待つ、あしひきの山のたをりに、の見ゆるあまの白雲、海神わたつみの沖つ宮辺みやべに、立ち渡りとのぐもり合ひて、雨も賜はね」
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
さて『古事記』にこれより先かの尊豊玉姫の父海神わたつみのもとより帰国の時一ひろの和邇に乗りて安著し
いなばの兎の話、鯛の喉から釣り針を取る海神わたつみの宮の話、藤葛ふじかずら衣褌きぬはかまや弓矢に花の咲く春山霞男はるやまのかすみおとこの話、玉が女に化するあめ日矛ひぼこの話、——これらを我々はお伽噺と呼び得ぬであろうか。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
こゝにせまりて海神わたつみ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
恋があり夫婦があり親子があった海神わたつみの国が、地上的な不完全さを漸次払い落とし、煩悩なき浄光の土の観念を漸次取りいれつつ、ついに海底の国より天上の世界に発展して来たのである。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)