油団ゆとん)” の例文
夜は光琳こうりん風の枕屏風まくらびょうぶのかげでねむり寒いときは朝めをさますと座敷のなかへ油団ゆとんをしいてゆみずを幾度にもはこばせて半挿はんぞうたらいで顔をあらう。
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
指されたあたりを源内先生が眼で辿って行くと、床に敷いた油団ゆとんの端が少しめくれ、その下から紙片のような白いものが覗出のぞきだしている。源内先生は、頷いて
その名残なごりに奥の部屋の古びた油団ゆとん冷々ひやひやと見えて、突抜けの縁の柱には、男の薄暗い形があらわれる。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
後者はよく「岐阜団扇」の名で通りました。漆塗うるしぬりの紙を用います。今に流行はやりませんが油団ゆとんも和紙のものとして忘れ難い品であります。何枚も紙を貼り合せ油または漆をひきます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
そこは陳東海の居間とおぼしく、三十畳程の広々とした部屋で、床には油団ゆとんを敷詰め、壁には扁額へんがくや聯を掛け、一方の壁に寄せて物々しいまでに唐書とうしょを積上げてある。