河岸通かしどお)” の例文
また若い文学者間には有名なメイゾン・コオノスが小網町こあみちょう河岸通かしどおりを去って、銀座附近に出て来るのも近いうちだとかいう噂がある。
銀座 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
セエヌの河岸通かしどおりの古道具屋あたりに見つけるものと大して相違の無いような、仏蘭西風の銅版画としては極く有りふれたものであった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と云って戸外へ出ると、いつの間にか街は青い夕靄ゆうもやめられて、河岸通かしどおりにはちら/\灯がともって居る。
少年 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
君江は舞踊家木村義男としめし合して、カッフェーを出てから有楽橋ゆうらくばしの暗い河岸通かしどおりで待合せ、自動車で三番町の千代田家という懇意な待合へ行った。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
雑誌「三田文学」を発売する書肆は、築地の本願寺に近い処にある。華美はで浴衣ゆかたを着た女達が大勢、殊に夜の十二時近くなってから、草花をかいに来るお地蔵さまの縁日は、三十間堀の河岸通かしどおりである。
銀座界隈 (新字新仮名) / 永井荷風(著)