桔梗屋ききょうや)” の例文
「見たか聞いたか金山地獄で、ここじゃあ話にならねえのさ。岡崎町の桔梗屋ききょうやめえだ。親分、せいぜい急いでおくんなせえ。」
扇屋といえば、今この、六条柳町に嬌名のたかい初代吉野太夫の名がすぐ思い出されるし、桔梗屋ききょうやといえば、室君太夫むろぎみだゆうの名をもってひびいている。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平間重助はその馴染なじみなる輪違わちがいの糸里という遊女、平山五郎は桔梗屋ききょうやの小栄というのをつれ込んで、この三組の男女は、誰憚らぬ酒興中、芹沢は得意げに言うことには
ところでその晩のことであるが、桔梗屋ききょうやという土地の茶屋から、紫錦へお座敷がかかって来た。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
又西河岸の桔梗屋ききょうやへ行って繁岡しげおかの顔でも見て楽しむ事が出来るという謀叛むほんが起り、其の深更に及んでお筆のうちの水口を開け忍込んで見ると親子とも能く寝付いて居る様子
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
おなじく二十日には、深川箱崎町はこざきちょうの木綿問屋、桔梗屋ききょうや安兵衛の娘のお花、これも十七歳。
顎十郎捕物帳:22 小鰭の鮨 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
平次がガラッ八をれて車坂の桔梗屋ききょうやへ行ったのはもう夕方。
「……宿しゅくに、桔梗屋ききょうやと云うのがあるかい、——どこだね。」
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
桔梗屋ききょうやでございます、桔梗屋喜七は手前共でございます」
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)