柔媚じゅうび)” の例文
また上京かみぎょうの寝殿の長押なげしにい崩れて、柔媚じゅうびな東山を背にし、清澄な鴨川かもがわの水をひき入れた庭園に、恍惚こうこつとしてながめ入る姿を描くのである。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
後年の名筆であってしかも天真さに欠け、一点柔媚じゅうびの色気とエゴイズムのかげとを持つ趙子昂ちょうしこうの人物などと思い比べると尚更はっきり此事がわかる。
書について (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
そのおん柔媚じゅうびなれども言々風霜をさしはさみて、りんたり、烈たり。馭者は感奮して、両眼に熱涙を浮かべ
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
このやうな生れながらの差別けじめが、或る時には彼の胸に加へられる抑圧となり、或る時には鳩尾の辺りを撫でさする取澄した柔媚じゅうびひつらひとなつた。彼は次第にこの待遇に慣れて行つた。
垂水 (新字旧仮名) / 神西清(著)