未決監みけつかん)” の例文
賊の娘の文代は、明智に味方し、実の親を捕縛させた苦衷くちゅうをめで、いずれは無罪放免ときまっていても、一応未決監みけつかんに収容せられた。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「検事局からすぐに根岸の未決監みけつかんへ送られているのさ。それはまあ、これからの工夫として——私が心配しちまッたのは、おまえの方さ」
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼女かのぢよは、片山かたやま同志どうしのKうちせて、かれ居所ゐどころさがしてゐたが、そのかれが、I刑務所けいむしよ未決監みけつかんにゐるとわかつたのは、行方不明ゆくへふめいになつてから、半年はんとしもののちだつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
そして色々の役人に幾度となく取調べを受けた上、思出してもゾッとする未決監みけつかんへ入れられたのです。私は何だか白昼悪夢にうなされている気持でした。
二癈人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
今仮にだ、彼奴が不意の捕縛の為に、五万円の隠し場所を相棒に知らせる暇がなかったとしたらどうだ。彼奴としては、未決監みけつかんに居る間に、何かの方法でその仲間に通信する外はないのだ。
二銭銅貨 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)