いづく)” の例文
邦家の事いづくんぞ長舌弁士のみ能く知るところならんや、別に満腔の悲慨をたゝへて、生死悟明の淵に一生を憂ふるものなからずとせんや。
富嶽の詩神を思ふ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
わが頑冥なる、いづくむぞ敢てレツシングを以てみづから比せむや。されどわれもレツシングも文壇に立ちて談理の業をなすものなり。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
所が、あにいづくんぞ圖らんや、この堂々として赤裸々たる處が却つて敵をして矢を放たしむる的となつた所以であつたのだ。
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
墳墓も亦た Time の為に他の墳墓に投げらるゝなり、墳墓すら其迹をとゞめず、いづくんぞ預言者、英雄、詩人を留めんや。
頑執妄排の弊 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
よしや頭が禿げてもこのあつたかい若々しい心情こゝろもちだけは何日いつまでも持つて居たいものだと思つて居る。いづくんぞ今にして早く蒸溜水の樣な心に成られるよう。
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
吾人の之を感ずるは、電気の感応を感ずるが如きなり、斯の感応あらずして、いづくんぞ純聖なる理想家あらんや。
内部生命論 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
然れども、吾人もとより哲学者にあらず、いづくんぞ斯かる面倒なる事を議論するの志あらんや。
人生の意義 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
歩々人境を離れて天景に赴く、人間じんかんこの味あり、いづくんぞ促々そく/\として功名の奴とならむ。
客居偶録 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
いはんや沈痛凄惻人生を穢土ゑどなりとのみ観ずる厭世家の境界に於てをや。いづくんぞ恋愛なる牙城にる事の多からざるを得んや、曷んぞ恋愛なる者を其実物よりも重大して見る事なきを得んや。
厭世詩家と女性 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
物質的革命に急なるの時、いづくんぞ高尚なる思弁に耳を傾くるの暇あらんや。曷んぞ幽美なる想像に耽るの暇あらんや。彼等は哲学を以て懶眠らんみんの具となせり、彼等は詩歌を以て消閑の器となせり。
漫罵 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)