晦日かいじつ)” の例文
九月晦日かいじつ病婦は遂に不帰の人となった。枕山が「悼亡」の律詩中に「一火延焼旧草廬。連宵野宿中寒初。」〔一火延焼ス旧草廬ヲ/連宵野宿シ寒ニあたルノ初〕とある。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
八月晦日かいじつ毅堂は京師に新設せられた総裁局の徴士に抜擢ばってきせられたので、明倫堂督学の職を辞した。徴士は列藩より人材を推薦して新政府の事務にあずからしめたものをいうのである。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
晦日かいじつ。越河ノ駅ニ抵ル。コレヨリ以北ハ仙台藩ノ旧封域ニ係ル。今ハ白石県ノ管内ニ入ル。一峻坂しゅんはんユルヤ巌石縦横ニ路ヲさえぎル。騎シテ過レバ石ハあぶみト相磨ス。俗因テ磨鐙あぶみすり坂トイフ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)