日覆ひおい)” の例文
青い空をせいた葭簀よしず日覆ひおいが砂利の上に涼しい影を一面に落していた運動場……わたしの眼にそのさまが浮ぶのである。
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
夏中縁先に張出されてあった葭簀よしず日覆ひおいれて、まだ暑苦しいような日の差込む時が、二三日も続いた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
夏場の市はからきし不景気で、ななツ半時分だと露天みせ日覆ひおいの影もそう長くは延びていない頃だのに、みちは人影もまばらで、熱い陽あしがはすかいに背中をあぶるばかりだった。
蕎麦の花の頃 (新字新仮名) / 李孝石(著)
印絆纏しるしばんてんを着た男が、渋紙の大きな日覆ひおいを巻いている最中であった。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)