とっ)” の例文
肝腎かんじんの芸術的興味がとっくの昔に去っていて、気の抜けた酒のような気分になっていたから、苦辛くしんしたのは構造や文章の形式や外殻の修飾であって、根本の内容を組成する材料の採択、性格の描写
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「しかし、とっくに開封されているじゃありませんか。遺言書の内容だけは、話してしまった方がいいでしょう」熊城はさすがに老練な口穽かまを掛けたけれども、真斎はいっこうに動ずる気色けしきもなく
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
外国人がめなかったなら、あるいは褒めても高い価を払わなかったなら、古い錦絵はとっくの昔し張抜物はりぬきものや、屏風や襖の下張したはり乃至ないし乾物かんぶつの袋にでもなって、今頃は一枚残らずくなってしまったろう。