手向てむか)” の例文
大きなピストルをさしつけておどかされたので、たれ手向てむかひができず、声を立てる者さへありませんでした。
エミリアンの旅 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
一時は僕もハッとして、君に手向てむかおうとまでしましたが、考え直して見ると、そんなことをした所で、僅か半月か一月今の歓楽を延すことが出来る丈けです。それが何でしょう。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
討取は公儀の方がすむまじと云へば平左衞門呵々から/\と打笑ひ扨々さて/\夫では何の謀計はかりごとも行ひ難しよく思召おぼしめしても御覽あるべし先渠等かれら盜賊たうぞくの事故召捕めしとらんと致せし所手向てむかひ仕つり候故よんどころなく討取候と申に何のわけの候べき萬一此事このこと手違てちがひに成し處が半知はんち思召おぼしめさば公事は勝なりと言を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
グイグイとピストルの筒口をつきつけられては、流石にそれ以上手向てむかう勇気はなかった。守はただこぶしを握りしめて、身体中から冷汗を流して、無念の歯噛はがみをするばかりであった。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)