おく)” の例文
玄関へ加賀田さんが出て来て、上れと云はれておくし心を隠してその人にいて行きますと、幾室かを通つてそれから出た所は明るい庭の前でした。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
と勢い烈しくむかいましたから、丹三たんざはこれにおくしてあとしさると、おえいは嫁入姿の儘で駆出し、可愛い丹三さんに怪我をさせてはならないと思い
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
五円や十円は恵んで呉れるだろうというので、姉と相談の上重二郎が春見の所へ参りましたが、家の構えが立派ですから、表からはおくして入れません。
これが幽霊かと思えば、萩原は此の世からなる焦熱地獄しょうねつじごくに落ちたる苦しみです、萩原のうちは四方八方にお札が貼ってあるので、二人の幽霊がおくしてあとさが
あまつさえ来月の四日中川で殿様を殺そうというたくみの一伍一什ぶしゞゅうくわしく殿様の前へ並べ立て、そしてお手打になろうという気でありますから、少しもおくする色もなく、平常ふだんの通りで居る。
胴巻の中に有った百金子きんす紛失ふんじついたしたに、さては盗賊どろぼうかと思うとあと怖気立こわけだっておくするもので、お國も一驚いたが、たちまち一計を考え出し、此の胴巻の金子の紛失したるをさいわい
と云いながら又作が無法に暴れながら、ずッと奥へ通りますと、八畳の座敷に座布団の上に坐り、白縮緬しろちりめん襟巻えりまきをいたし、くわ烟管ぎせるをして居ります春見丈助利秋のむこうおくしもせずピッタリと坐り