憎悪にくみ)” の例文
貴所あなたの御同志が政府の憎悪にくみを受けて居なさいますことは、兼々承知致して居りまするが、貴所あなたの御一身にのみ、不意の御災難が降り懸かると云ふのは
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
疾風迅雷とでも形容しましょうか、怒りと憎悪にくみとで斬り込んで来た、鶴吉の刀のすさまじかったことは! あやうく受け流し、わたしは木立ちの中へ駈け込みました。
怪しの者 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
節子と同じ屋根の下に暮して見た四月余りは短かかったと言え、可成かなり岸本の心持を変えた。かつ憎悪にくみをもって女性に対した時のような、畏怖いふ戦慄せんりつも最早同じ姪から起って来なかった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)