想起おもいおこ)” の例文
梅子が泣いて見あげた眼の訴うるが如くわびるが如かりしを想起おもいおこす毎に細川はうっとりと夢見心地になり狂わしきまでに恋しさのこころ燃えたつのである。
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
この土地では大正開拓期の盛時を想起おもいおこさせる一隅に在ったのも、わたくしの如き時運に取り残された身には、何やら深い因縁があったように思われる。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
想起おもいおこすと夫が既に過去の事とは思はれ無い。先あ聞き給へ、其真相と云ふのは実にうなんだ。
一度は僕も自分の癖見ひがみだろうかと思いましたが、合憎あいにく想起おもいおこすは十二の時、庭で父から問いつめられた事で、あれおもい、これを思えば、最早もはや自分の身の秘密を疑がうことは出来ないのです。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)