悄沈しょうちん)” の例文
意気悄沈しょうちんした狂信者ニコライの虚偽の自白があったために、事件が並々ならず紛糾していた上、真犯人に対して明白な証拠どころか
幼い時から彼は、あらゆる艱難かんなんに黙って堪えてゆく雄々しい忍従的な彼女の姿を、いつも見慣れていた。そして今のその悄沈しょうちんしたさまが、彼には心配だった。
それはわたくしの意識をして、今にして夢より覚めたように感ぜしめ、また、新なる夢に入るもののようにも感ぜしめた。肉体の悄沈しょうちんなどはどこかへ押し遣られてしまった。
雛妓 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
捕物はじまってここに十六番、かつて見ないほどにも意気悄沈しょうちんのもようでしたから、おこり上戸、おしゃべり上戸とともにいたって泣き上戸の伝六が、おろおろと手放しで始めました。
あるいはまたあたかも、群集の中を通りながら、二つの深い眼にぶつかったようなものだった。そういう現象はしばしば、精神が空虚のうちに身悶みもだえをする悄沈しょうちんの時間のあとに起こった。
しかし、一つの作品が完成してから他の新しい作品が精神を奪うまでの間うちつづく、悄沈しょうちんの時期にはいった時、彼は周囲を見回して自分の孤独に慄然りつぜんとした。なんのために書いたかを彼は怪しんだ。