悄気返しょげかえ)” の例文
半刻ばかりの後、八丁堀組屋敷で、与力よりき笹野新三郎の前に銭形の平次ともあろう者が、すっかり悄気返しょげかえって坐っておりました。
喧嘩ならば頼まれないでも、弥次に飛び出して拳を振り廻す連中が、大名の行列と気がついて、悄気返しょげかえって逃げ出しました。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ただ一人例外はマイダーノフで、彼は感激かんげきする機会がなくなると、たちまち気落ちがして、悄気返しょげかえってしまった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
ところが生憎あいにく不漁しけで休みの札が掛っていたので、「折角暴風雨あらしの中を遥々はるばる車を飛ばして来たのに残念だ」と、悄気返しょげかえってしきりに愚痴ったので、帳場の主人が気の毒がって
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
『あなた西洋臭くないでしょう。しかし、あなた鼻高い。眼青い。駄目だめです』などと夫人にからかわれ、『あ、どうしよう、私この鼻』など言って悄気返しょげかえり、『真ッぴら、真ッぴら』と
内にいる分には何でもいいが、外へ出るには、これでは……と悄気返しょげかえったのも無理はありません。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「師匠に死なれて悄気返しょげかえっていますよ。首ぐらいくくり兼ねない様子で」
平次が悄気返しょげかえるのも無理はありません。一と月ばかり前から、江戸中を荒し廻る恐ろしい強盗、時には女もさらえば、人もあやめる兇悪無慙きょうあくむざんなのが、——銭形平次らしい——という噂が立ったのです。