恭順きょうじゅん)” の例文
もとより彼は尊氏の恭順きょうじゅんなどにすこしでも本来の戦意をにぶらせているものではない。相手の偽装降伏は百も知ってのうえの戦略だった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
毛利父子を恭順きょうじゅんせしめ、三家老の首を挙げて、和平の局を結ばしめたのは、実は薩摩の西郷吉之助があって、そのかんに奔走周旋したればこそだ、尾張藩の功というよりも、西郷の功だ
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ずきんをかぶったやさしく恭順きょうじゅん奴隷どれいぶりの老女中が一人とである。
私達は頭を下げたまゝ只管ひたすら恭順きょうじゅんの態度を取った。
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「その節は、敵であったが、いまの叡山は、まったく無力化して、安土に対しても降伏恭順きょうじゅんを誓うておる良民ではないか」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
毛利元就もうりもとなりも然り、上杉謙信うえすぎけんしんも然り、本願寺も然り、みな皇室に献金もし、御造営にも手つだい、綸旨りんじにも恭順きょうじゅんしている。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いやこの忠顕だけに来たわけではない。准后じゅんごう廉子やすこ)のおん許へも懇願の使いを出して、るる、恭順きょうじゅんのこころをべ、前非を悔いておるていなのだ」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なんの、軍事も諸政もすべてを捨てた恭順きょうじゅんの身。あとは、あとの者の一存に委すしかない。……だが」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
に心からな回向えこうをささげている姿にみえる。また心から朝廷へも恭順きょうじゅんの意をひょうしている彼かに見える。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)