恟々おずおず)” の例文
女の声にせかれて、馴れない場所へ恟々おずおずと入りかけると、後ろにあたって、バタバタという跫音が遠のいて行った。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
恟々おずおずと少しずつ潜戸くぐりの方へ身を動かして行きながらも、しきりと誰かをさがすように、浪人たちの休息している本堂のほうを濡れた眼で見ているのだった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鹿野文八かのぶんぱちが出て行った。まもなく庭面にわものほうに恟々おずおずした人影が立った。勘太は、貴人に対する礼を知らない。文八に教えられて、いわれるままに地へ坐った。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして前栽せんざいにある車井戸のほうへ戻って来ると、髪もすそも埃にまみれた——しかしどこか気品のある若い女が——門前から中を覗いて、恟々おずおずと、去りがてに佇立たたずんでいる。
大谷刑部 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
恟々おずおずいう。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)