心遣こころやり)” の例文
毎夜々々湯を召すさえ物憂く見えたまえば、気鬱きうつ疾病やまい引出ひきいだしたまわむ、何か心遣こころやりすべは無きかとこうべを悩ます三太夫、飛んでで、歓迎よろこびむかえ、綾子の居間に案内せり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
晩年暫らく相乖離あいかいりしていたのを衷心遺憾に思いながらも、最後の会見に釈然として何もも忘れ、笑って快く一時間余りも隔てなく話したのはめてもの心遣こころやりであった。
まさに嫁がんとする娘の、嬉しさと、恥らいと、心遣こころやりと、恐怖おそれと、えみと、涙とは、そのまま膝に手を重ねて、つむりを重たげに、ただ肩を細く、さしうつむいた黒髪に包んで、顔も上げない。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
女を待つ心遣こころやりにしたい。誰か、あの国の歌を知っておらんか。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)