御許おもと)” の例文
一日あるひ父が宿にあらぬひまに、正太郎磯良を六一かたらひていふ。御許おもとまことあるみさをを見て、今はおのれが身の罪をくゆるばかりなり。かの女をも古郷ふるさとに送りてのち、父の六二おもてなごめ奉らん。
いや、心に受くるそのいたみにおいては、御許おもとよりも、誰よりも、謙信こそはその重責と傷心に深く自らを鞭打つものだ。ましてや今宵のごとく、戦のあと、いとど寂やかに時雨しぐるる夜などは
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御許おもとにはわらべ女童めわらは数群れて亦若かりしけぶりだになし
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
世にも悲しげなるさまして、花をたむけ水をそそぎたるを見て、あな哀れ、わかき御許おもとのかく一〇二気疎けうときあら野にさまよひ給ふよといふに、女かへり見て、我が身よひ々ごとに詣ではべるには
「——いやいや、薄縁なこの勝家へ、御貞節はうれしく思うが、元々、三人の息女らも、浅井殿(長政)の遺子。また秀吉とても、主筋の御妹にあたらるる御許おもとら母子に、つれなかるべきはずもない。……そう致されよ、早々、お支度されよ」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十日ばかりさきに一〇七かなしきつまうしなひたるが、一〇八世に残りてたのみなく侍れば、ここに詣づることをこそ一〇九やりにものし侍るなれ。御許おもとにも一一〇さこそましますなるべし。女いふ。