彷徨さすら)” の例文
イネ帝国が亡びると同時に、国軍の一部は、悲憤の涙をのんで、数隻の潜水艦に乗って、太青洋に彷徨さすらい出たのであった。
二、〇〇〇年戦争 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「されば、その河内路を心あてにしておりますなれど、山から山の彷徨さすらい、いかにせん、方角もわかりませぬ」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さすがに子供の時から異郷に彷徨さすらって、自分を助けてくれた恩人を、国内一の銅山王に仕立て上げたような人は、することすこと考えていることやっぱり
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
大次郎の影を求めて彷徨さすらい歩いて来たのであった。
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
彼の良心は、そのひそやかな音にピンピンと鞭打たれ、五臓の血をしぼらるるばかりに苛責かしゃくされた。彼はゆうべ一夜で八大地獄を彷徨さすらうほどな苦患くげんをおぼえた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仏子ぶっし範宴、人と生れてここに二十九春秋、いたずらに国土の恩にれて長じ、今もって、迷悟を離れず悪濁おだく無明むみょうにあえぎ、幾たびか籠り幾たびか彷徨さすら
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とは「古典太平記」がいっているところだが、冷たい晩秋の山雨さんうに吹き打たれたあげく、二日三晩もの彷徨さすらいを、天皇までが、まったくお口に一物をらなかったとはおもわれない。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こうして山中の杣小屋そまごやにお身を休ませられ、以後二日、それも夜だけ、彷徨さすらいをつづけたあげく、三日目の夜明けごろは、まったく疲れはてたお姿を、神童子越じんどうじごえの路傍にぼうとしておいでだった。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)