当擦あてこす)” の例文
もし叩きつけるとすれば、彼ら三人を無心に使嗾しそうして、自分に当擦あてこすりをやらせる天に向ってするよりほかに仕方がなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
また好んで当擦あてこすりをするわけでもなんでもないが、一流の店ともあろうものが、こういう悪酒を作って売り出させようとする手段を卑しむのは、少しも無理がない。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
お絹は蔭でそうは言っても、面と向かうと当擦あてこすりを言うくらいがせいぜいであった。少し強く出られると返す言葉がなくなって、泣きそうな目をするほど、彼女は気弱であった。
挿話 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
瞋恚しんいが燃ゆるようなことになったので、不埒ふらちでも働かれたかのごとく憤り、この二三日は来るごとに、皮肉を言ったり、当擦あてこすったり、つんとねてみたりしていたが、今夜の暗いのはまた格別、大変
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
叔母は最初から僕が原稿を書いて食扶持くいぶちでも入れるものとでも思ってるんでしょう、僕がペンを持っていると、そんなにして書いたものはいったいどうなるの、なんて当擦あてこすりを云います。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)