ひッ)” の例文
透かして見ると、ぴちぴちねるのが尾のようで……とにかく、長くないのだから、安心して、ひッつかまえると
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
正「アノそれ、いつぞやそれ四年あとの九月の廿日はつか、吉原土手で親方が中へ這入って下すって、侍がエーッてって刀をひッこ抜いた時に助けて下すった親方に違いねえようで」
ひッつかんで声をこらえた、いばらの枝に胸のうずくばかりなのをなお忍んだ——これをほかにしては、もうきこえまい……母の呼ぶと思う、なつかしい声を、いま一度、もう一度
小春の狐 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
若旦那さまもお嬢さまも、只今お聞きの通りの訳でがんすから、お嬢さま何うか此処これへおいでなすって、あなたの御存分になすって、此の野郎の鬢の毛を一本/\ひッこ抜いてお胸を
ばちを片手でひッつかむと、恐る恐る差出さしだした手を素疾すばや引込ひっこめ、とさかをはらりと振ってく。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
畳の上でお母アの手に懸って死ぬのは親の慈悲ということを、今初めて覚えた……アヽわかった、お前も定めてにくかろうが、若旦那さまが此処これへおいでになって、己のびんの毛を一本/\ひッこ抜き
父親は、相場、鉱山などにひッかかって、大分不景気だったようですが、もと大蔵省辺に、いい処を勤めた、退職のお役人で、お嬢さん育ちだから、品がよくちょっと権高なくらい。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)